器にこだわれば蕎麦がもっとおいしくなる!まずはそば猪口から始めてみよう
おいしいそばを手に入れたら、茹でる時間やつゆの濃さなど味わいに気を遣うのはもちろん、器にもこだわって見た目にも満足できるそばへ仕上げたいところ。そば猪口やそば徳利などそばならではの器は、どのように生まれ、紡がれてきたのでしょうか。
集めるのも楽しい「そば猪口」
そばの器の中でも、とくに人気でさまざまなバリエーションを楽しめるのが「そば猪口」です。
ほとんどのそば猪口は口径約7cmで高さはそれより少し小さく、底の径は約4cmから6cmに収まります。
そば猪口の原点は古伊万里だといわれ、300年近く前に作られたのだそう。
18世紀後半の江戸時代末期にそばがブームとなり、そば猪口も広く普及。多くのそば猪口が作られるようになり、数多くの絵柄が生み出されました。今でもそば猪口の絵柄はデザイン性に富み、モダンなものから伝統的な絵柄までさまざまな選択肢があります。
伝統的なそば猪口の多くは、陶器や磁器で作られ、特に有田焼、九谷焼、美濃焼などの日本の有名な焼き物産地から多くの美しいそば猪口が作られてきました。
そばつゆを飲んだあとに見える、底に描かれた絵柄も楽しいポイント。
この底の絵柄は「見込み」といわれ、草花や昆虫、動物などさまざまアイテムがデザインされています。
また、そば猪口はそばつゆを入れるためだけでなく、お茶やウイスキーを入れて飲んだり、小鉢として、サラダやデザート、前菜を盛り付けるのに使ったりちょうどいい器です。
「雑器」ともいわれ、いろんな使い方ができる万能なデザインといえるでしょう。
そば猪口をコレクションする愛好者も多く、陶器市などでは新しいそば猪口が毎年多くの人に求められています。
そば猪口は日本の食文化と深く結びついた存在であり、歴史とともにその魅力を深めています。
そばつゆの濃さを均一にする「そば徳利」
そば猪口と同じく、そば屋で欠かせないのが「そば徳利」。
徳利に入ったつゆをそば猪口に継ぎ足しながら食べることで、つゆが薄まるのを防ぎ、最初から最後まで同じ濃さのそばつゆで食べられます。
形状や用途が日本酒を入れる「徳利」に似ていることから「そば徳利」と呼ばれます。
そば徳利は、そば猪口ほど種類が豊富ではなく、お酒用の徳利で代用されることもあります。中でも丸みがあり注ぎ口がキュッとすぼまったものを、そば徳利として用いることが多いようです。
そば徳利は、江戸時代から発展してきた日本の食文化と密接に関連しています。江戸の庶民の間でそばは人気の食べ物であり、その提供スタイルも当時から現在まで続いています。そば徳利は、そばの「つけそば」という食べ方を補完するために重要な役割を果たしてきました。
目でも味わう「ざる」と「受け皿」
茹で上がったそばは、放っておいてもすぐに伸びてしまうほど水分を吸収しやすい食べ物です。そのため、きちんと水気を切っていても底の部分のそばはふやけてしまいやすく、せっかくのそばの味が台無しになってしまいます。
ざるは、そんなそばを最後までおいしく食べるために生まれたもの。とくに竹ざるは、水切れがスムーズで重宝されます。
そんなざるの下には、こだわりの「受け皿」を敷くのが一般的。受け皿は平皿であればどんなものでも対応できますが、6〜7寸の大きさがあるとなおいいでしょう。
「薬味入れ」にもこだわりたい
「薬味入れ」は、そば猪口の口にちょうど合うよう設計された専用のものを使ったり、小皿で代用したりとさまざま。シンプルなものから絵柄の楽しいものまでいろんな器があるので、いろいろこだわってみると楽しいです。
受け皿がシンプルなものであれば、個性的な薬味入れを取り入れて遊び心を演出するのも良さそうですね。
おいしいおそばでも、間に合わせの器でそばを食べるとなんだか味気ないもの。とくにそば猪口はデザイン豊富なので、気分によって使い分けられるようにいろいろ揃えてみるのも楽しみの一つです。奥深い器の世界、ぜひのぞいてみてはいかがでしょうか?